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見たこと、聞いたこと、考えたこと。

[買いました] 立川談志/談春 親子会in歌舞伎座

談志・談春 親子会

年末に買って、ようやく見ることが出来ました。

2008年6月28日の「歌舞伎座・親子会」を収めたDisc1と、その舞台裏の様子と解説を収めたDisc2からなる2枚組DVD。

立川談春の映像がDVD化されるのはおそらく初めてだろうし、高齢かつ体調の優れない談志にとっては、ひょっとすると最後のDVDになるかもしれない、まさにドキュメンタリーな作品です。

立川談志 立川談春 親子会 in 歌舞伎座 ~伝承というドキュメンタリー~ [DVD]

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結論から言うと「あと3年早ければ・・・」と言うのが正直な感想です。

談春は著書「赤めだか」の中で

立川談志だっていつかは必ず死ぬのです。あと十年生きている保証はどこにもありません。己の晴れの日の口上に談志(イエモト)が並んでくれない状況を真剣に想像するべきです。

と懸念を表明しているのですが、その懸念がもはや現実となりつつあることを図らずも示してしまいました。

当初の予定では「慶安太平記」と「三軒長屋」を談志・談春のリレー形式で演じる予定だったらしいですが、テレビなどで見て知っての通り談志の声はかすれてしまってどうにも状態が良くない。加えて体調も想像以上に悪いらしく30~40分の長講を二席も語れる状態でないのは明らかでした。

結果的に談志は「やかん」の一席のみを演じることになり、親子会というよりは談春の独演会にゲストで談志が出演したような様相になってしまいました。

それでもなんといいますか立川談志という人は、その全盛期が切っ先鋭い日本刀の名刀とするならば、現在も研ぎ澄まされて小振りにはなったものの使いこまれた柳刃のように実に切れ味の良いいい仕事をしてくれるわけです。

言い訳が多いのは今に始まったわけでなく一種の芸風で、単純に客の反応を比べても談志に軍配が上るのは一目瞭然。今後、高座に上る回数も、かける根多の数も目に見えて減っていくのでしょうが、例え本人の納得のいく芸ではないにせよ、一席でも多く映像を残していただくことが後進の為になるのではないかと思ったりします。こういう了見は粋じゃないんでしょうね。

さて肝心の談春はといいますと、いわゆる人情噺ゆえ笑いの絶対量は少ないものの、人を引きつける力量は素晴らしいものがあります。

談志が「俺より上手いんじゃないか」という通り、本寸法の古典、講談噺や人情噺の力量は天下一品で、本人が「実力の半分」というのなら本来の力量は如何程なのかと勘ぐってしまうほどレベルの高い高座だったと思います。

Disc2で、二度目の高座に上る前、談志に挨拶する談春に、楽屋見舞いに来た石原慎太郎東京都知事が声をかけるシーンがあります。

あなたはね、噺もっと崩さなきゃダメ
昔の談志みたいな噺じゃダメ

より正統に古典を伝承しようとする姿勢は現代のエンターテイメントとして長所短所の背中合わせ。

良い弟子というのは、師匠のすべてではなく、特長の一部を受け継いで成長するものだといいます。

やっぱり、良くも悪くも談志の古典落語の遺伝子を引き継ぐのはこの人なのでしょうね。

そんなことを感じながら、「談春の芝浜」をあらためて聞きたくてDisc1をトレイに載せるのでした。

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コメント

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    談春の「赤めだか」、志らくの「雨ン中の、らくだ」と読みすすめると、やっぱり師匠…